ワンピース世代の組織作りとは? ~「自由」と「仲間」が価値観の世代と向き合う~

    ■世はまさに大海賊時代

    鈴木貴博氏は自身の著書で20代の若者をワンピース世代、その上司層をガンダム世代と例えた。順番で言えば、団塊の世代、ガンダム世代、そしてワンピース世代ということになる。

    ワンピース世代の価値観は「自由」と「仲間」である。ヨコのつながりを大切にし、一元に管理されることを極端に嫌う。20代はコミュ力が低いなんて言われるがとんでもない。彼らはとんでもなくコミュニケーションを取る。ただし、それはヨコのつながりに対してであって、タテのつながりには積極的にコミュニケーションを取ろうとはしない。

    個人を尊重して認め合い、励まし合うワンピース世代に対して、その上司層にあたるガンダム世代はタテのつながりを尊重する。というか、組織というしがらみから抜け出せない世代で、まあまあ腐った組織でも、自身の葛藤と戦いながら、その規律の中で任務を遂行するのである。

    ■どうやって組織を形成するのか?

    ヨコを重視する世代とタテを重視する世代。果たして相容れることができるのか。
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    Q:あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか?

    うん、ワンピースですな。社風といった会社の特徴に惹かれる要素は無く、個性と仲間同士のつながりが最も重視される結果である。
    そんなにアットホームである必要もなく、活気が無くても構わない。
    「アットホームな会社です!カラッとした職場です!」でも「みんなバラバラな会社です!ジメッとした職場です!」でもどちらでも構わないのである(さすがにイヤかも)。

    この世代は「この会社で働きたい」というよりは「この仕事がしたい」という志向で会社を選ぶので、企業理念といった就社に関わる選択肢は入ってこない。それゆえ「全社一丸となって目標を達成する」といったことには興味を持たない。個性を持ち、SNSで自己表現することがスタンダードな彼らにとっては「会社に合わせる」という意識自体がすでに存在しないのかもしれない。

    さて、タテの世代とヨコの世代。どうやって組織を形成するのか。
    会社は仕事をするところである。ワンピース世代は「この仕事がしたい」と志向して会社に入ってくる。両者に共通のキーワードは“仕事”である。
    このキーワードを軸にして組織を構築すること以外に手は無さそうだ。

    ■仕事に何を求めているのか?

    ではワンピース世代の彼らは、個の尊重と仲間意識の中で働きながら、仕事に何を求めているのだろうか。

    Q:あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?

    彼らが求めるのは決して独りよがりの仕事ではなく、世の中に影響を与え、社会の役に立ち、取り組むことの意義を強く感じながら、成長を実感できる仕事であることがわかる。
    社内の仕事を見渡して、「自社の取り扱っている商品に胸を張れるか」「世の中に誇れる仕事か」「社会に存在する意義があるか」を今一度考えて欲しい。
    これは世代を超えてとても大切なことである。

    ■ワンピース世代とガンダム世代を結びつける

    自社の仕事に価値と意味を見出したら、最後は組織として共有すること、コミュニケーションを取ることだ。ワンピース世代とはコミュニケーションが取りにくいと思われるかもしれないが、積極的に自己を発信している世代に対しては、まずSNSを介してその輪に入ってしまえば、意外にスムーズに交流できる。
    ここで重要になるのが上司としての在り方だ。

    Q:あなたが上司に期待することは何ですか?

    個人としての存在を尊重することがデフォルトの世代と円滑なコミュニケーションを図るには、一人一人に対して、丁寧な内発的動機付けが必要となる。
    内発的動機付けとは、例えば、頑張れば給料が上がるといった物質的なご褒美ではなく、成長が実感できること、やりがいを感じること、など、内面的なご褒美のこと。
    「これはあなたでなければできない仕事だ」と意味付けを行ったり、「あなたの〇〇な頑張りがあったから達成できた」と、仕事への貢献度をしっかり伝えてあげること。
    何より、多様な個性を見極めて、それぞれに見合った目線で向き合い、集団の中にいる貴重な個人の存在を認めることだ。

    ワンピース世代の仲間意識と団結力は相当なものだ。そのグループダイナミクスを借りない手はない。ヨコとタテのコミュニケーションが取れたとき、あなたの組織は最強のものとなる。

    統計出典:リクルートマネジメントソリューションズ
    2023年 新入社員意識調査より
    writer : 桐原 清武
    厚生労働省認定キャリアコンサルタント。株式会社リクルートでキャリア開発に携わる。専門は人材採用・育成。人事担当者と求職者のカウンセリングは通算10,000回を超える。