VUCA的仕事環境ってナンダ? ~理想のアニキ像を探る旅~
仕事の難易度が上がっている。
正確には、“仕事をする環境の”難易度が上がっている。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語のことで、先行が不透明で見通し困難な状況をいう。
今夜、寝ようと思ったら巨人が進撃してくるかもしれないし、明日の朝起きたら領域が展開されているかもしれない。職場のコミュニケーションはリアルとバーチャルが混濁し、仕事の工程はデジタルとアナログが入り乱れる。世はまさに大海賊時代なのである。
そんな環境だから、新人が経験を積み、仕事をこなせるようになる難しさは増すばかり。
今回はそんな時代に皆を“絆”でつなぐアニキ像を探ってみたい。
Q.これまで、会社を辞めたいと思ったことがありますか?
「ある」は2人に1人どころかそれ以上。あなたの会社は大丈夫だろうか?
では、辞めたいと思いつつも、なぜ辞めずに働き続けているのだろうか。辞めるよりも魅力的な何かが職場にあることを信じつつ、次の質問の答えを見てみよう。
Q.辞めずに働き続けている理由で、影響の大きいものを最大2つまでお選びください。
微妙にポジティブな理由が見当たらないぞ。
言い換えると、縁とタイミングが合えば、迷いなく転職してしまうということ。
辞めたいという気持ちに打ち勝つ、目的意識を持って働いているというよりは、何となく仕事を続けていたり、仕方なく残留している人材が多数と言えたりする。これはいけない。早くアニキを呼ばねば。
ではそもそも、辞めたいと思ったことがある人の理由はどんなものなのか?
Q.辞めたいと思った理由で、影響の大きかったものを最大2つまでお選びください。
否定的な結果なので当然語尾に「ない」が付くわけだが、よくよく読み解くと、これは決して悪い傾向ではない。
テキストマイニングして、いくつかキーワード化してみると「やりがい」「意義」「やりたい仕事」「目指すキャリア形成」「自分の能力や持ち味」「成長」といった言葉が浮かび上がる。
つまり、やりがいや意義を感じれば頑張る、やりたい仕事に出会えれば満足する、目指すキャリア形成が実現するなら努力する、自分の能力や持ち味が活かせるなら労力は惜しまず、成長出できるなら前向きに働き続ける、ということ。
まだ大丈夫だぜ。人材は腐っちゃいない。とにかく早くアニキを呼ばねば。
人材が沈み切っているわけでないことは、次の質問がそれを裏付ける。
Q.仕事で、このためなら労力をかけてもよいと思うものは何ですか?
この結果は、「辞めたいと思った理由」にぴったり呼応している。
つまり、社内でこの項目を充実させることができれば、人材は迷うことなく、辞めようとか思うことなく、日々、元気に仕事してくれるわけである。
では、誰がどうやって仕事とプライベートのバランスを采配し、やりたいことを見つけ出し、その人に合ったスタイルの働き方を見極め、強みや持ち味を引き出すのか?
ここがとても重要なところである。
たぶん大谷翔平でも無理だ。畑が違い過ぎる。チコちゃんならどうだ?やめておこう、叱られるのはイヤだ。
そう、それができるのはやはり、職場の先輩であり上司である。しかし、先輩や上司なら誰でもいいという訳ではなさそうだ。
では、どんな人なら、たとえ自分にとっては耳に痛い指摘やフィードバックでも受け止めようと思うのだろうか。
Q. 上司や周囲の人について、どんな人だと、自分のダメなところや悩みなど何でも話しやすいですか。
これがまさに「理想のアニキ像」である。
世に、先輩・上司と呼ばれている皆様方、あなたはこんな人物だろうか?
人材は仕事上の助言だけではなく、人としての信頼感も求めている。
本気で人材と向き合えているだろうか。
どんなにテクノロジーが進んでも、結局のところ組織を支えるのは人である。
理想のアニキになるために必要なこと、それは「個 対 マス(集団)を理解すること」だ。
メンバーとして働いているときのつながりは主に横同士、個人と個人のつながりだが、先輩・上司になると、自分とメンバーの関係は、個人対集団になる。
メンバーという集団に対して、つい、一律物申していないだろうか?
見えている集団は、考え方も個性もやり方も違う個人の集まりだと理解しよう。
自分から見れば集団の中の一人だが、「相手から見ればあなたは唯一の一人だ」ということを知ろう。
理想のアニキがいる職場は、例えVUCA的仕事環境の時代でも決して組織不全に陥ることはないし、有望な人材が流出することもない。
頼むぜ、アニキ!
リクルートマネジメントソリューションズ
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厚生労働省認定キャリアコンサルタント。株式会社リクルートでキャリア開発に携わる。専門は人材採用・育成。人事担当者と求職者のカウンセリングは通算10,000回を超える。